12/31/2012

Gustave Doré - Neophyte


Neophyte
by Gustave Doré

Steve Hanks - Forever a Mystery


Forever a Mystery
by Steve Hanks

Steve Hanks - To Search Within


To Search Within
by Steve Hanks

 わたしはあなたを
 束縛せずに愛したい
 判定せずに称賛したい
 侵入せずに結ばれたい
 強制せずに誘いたい
 後ろめたさなしに別れたい
 責めることなく評価したい
 見下すことなく助けたい
 あなたも同じようにしてくれたら
 ふたりはほんとうに出会い、おたがいを豊かにできるでしょう

『無条件の愛』 by Virginia Satir

シルエット

スリランカ、チラウの海岸で撮った義兄のシルエット
スリランカのいち風景
 私が物語になる時、
 素のままの自分はあじけない、
 白い単衣(ひとえ)のケーキにイチゴ一粒のせたように、
 色合いが必要だ

 20000フィートの高みから、雲の切れ間に椰子が見える
 熱帯のあの島には、百を余る子供が駆け回っている
 自分の周りに百を余る乗客がいるが、
 誰も駆け回りはしない

 たとえば<たとえば>と言ってみて、
 ふと<ふと>と言ってみてそのあとに、
 進むことのむずかしさのあれこれを、
 目録のように並べたてても矛盾は解けない、

 私が物語になる時、
 素のままの自分はあじけない、
 いっそ物語そのものになってしまえば、
 色合いも要らなくなるだろうか、

『私が物語になる時』 by 3912657840

マンゴー

スリランカのいち風景 - マンゴー
親戚の庭のマンゴーの樹
スリランカのいち風景 - マンゴー
親戚の庭のマンゴーの樹


 空の青さをみつめていると
 私に帰るところがあるような気がする
 だが空を通つてきた明るさは
 もはや空へは帰ってはゆかない

 陽は絶えず豪華に捨てている
 夜になつても私達は拾うのに忙しい
 人はすべていやしい生れなので
 樹のように豊かに休むことがない

 窓があふれたものを切りとつている
 私は宇宙以外の部屋を欲しない
 そのため私は人と不和になる

 在ることは空間や時間を傷つけることだ
 そして痛みがむしろ私を責める
 私が去ると私の健康が戻つてくるだろう

 『六十二のソネット』 by 谷川俊太郎

12/30/2012


スリランカのいち風景 - スリランカのお寺の境内に住み着く猫一族


オデュッセウス

年末はだいたいこの詩の気分になります。

 「オデュッセウス」アルフレッド・ロード・テニスン
 友よ 来たれ
 新しき世界を求むるに時いまだ遅からず
 船を突き出し 整然と座して とどろく波を叩け

 わが目的はひとつ 落日のかなた
 西方の星ことごとく沐浴(ゆあみ)するところまで
 命あるかぎり漕ぎゆくなり
 
 知らず 深淵われらをのむやも
 知らず われら幸福の島をきわめ
 かつて知る偉大なるアキレウスを見るやも

 失いしは多くあれど 残りしも多くあり
 われら すでに太古の日 天地(あめつち)をうごかせし
 あの力にはあらねど われら 今 あるがままのわれらなり

 時と運命に弱りたる英雄の心
 いちに合っして温和なれど 
 努め 求め たずね くじけぬ意志こそ強固なれ。
 "Odyssey" by Alfred Load Tennyson
 Come, my friends,
 Tis not too late to seek a newer world.
 Push off, and sitting well in order smite

 The sounding furrows; for my purpose holds
 To sail beyond the sunset, and the baths
 Of all the western stars, until I die,

 It may be that the gulfs will wash us down:
 It may be we shall touch the Happy Isles,
 And see the great Achilles, whom I knew.

 Though much is taken, much abides; and though
 We are not now that strength which in old days
 Moved earth and heaven; that which we are, we are;

 One equal temper of heroic hearts,
 Made weak by time and fate, but strong in will
 To strive, to seek, to find, and not to yield.

この詩の解説を蛇足ながら書いておきます。

12/29/2012

私が物語になる時

昔、谷川俊太郎の詩、

 いくらか誇張されいくらか
 縁飾りをつけられていたけれど
 その物語はとても本当の人生に似ていて
 だがそれを読み終えたあとも
 自分の暮らしは続いていることに
 気づかないわけにはいかない
 電車の窓外では街並が切れ一面の菜の花