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12/31/2012

シルエット

スリランカ、チラウの海岸で撮った義兄のシルエット
スリランカのいち風景
 私が物語になる時、
 素のままの自分はあじけない、
 白い単衣(ひとえ)のケーキにイチゴ一粒のせたように、
 色合いが必要だ

 20000フィートの高みから、雲の切れ間に椰子が見える
 熱帯のあの島には、百を余る子供が駆け回っている
 自分の周りに百を余る乗客がいるが、
 誰も駆け回りはしない

 たとえば<たとえば>と言ってみて、
 ふと<ふと>と言ってみてそのあとに、
 進むことのむずかしさのあれこれを、
 目録のように並べたてても矛盾は解けない、

 私が物語になる時、
 素のままの自分はあじけない、
 いっそ物語そのものになってしまえば、
 色合いも要らなくなるだろうか、

『私が物語になる時』 by 3912657840

マンゴー

スリランカのいち風景 - マンゴー
親戚の庭のマンゴーの樹
スリランカのいち風景 - マンゴー
親戚の庭のマンゴーの樹


 空の青さをみつめていると
 私に帰るところがあるような気がする
 だが空を通つてきた明るさは
 もはや空へは帰ってはゆかない

 陽は絶えず豪華に捨てている
 夜になつても私達は拾うのに忙しい
 人はすべていやしい生れなので
 樹のように豊かに休むことがない

 窓があふれたものを切りとつている
 私は宇宙以外の部屋を欲しない
 そのため私は人と不和になる

 在ることは空間や時間を傷つけることだ
 そして痛みがむしろ私を責める
 私が去ると私の健康が戻つてくるだろう

 『六十二のソネット』 by 谷川俊太郎

12/30/2012

猫


スリランカのいち風景 - スリランカのお寺の境内に住み着く猫一族


オデュッセウス

年末はだいたいこの詩の気分になります。

 「オデュッセウス」アルフレッド・ロード・テニスン
 友よ 来たれ
 新しき世界を求むるに時いまだ遅からず
 船を突き出し 整然と座して とどろく波を叩け

 わが目的はひとつ 落日のかなた
 西方の星ことごとく沐浴(ゆあみ)するところまで
 命あるかぎり漕ぎゆくなり
 
 知らず 深淵われらをのむやも
 知らず われら幸福の島をきわめ
 かつて知る偉大なるアキレウスを見るやも

 失いしは多くあれど 残りしも多くあり
 われら すでに太古の日 天地(あめつち)をうごかせし
 あの力にはあらねど われら 今 あるがままのわれらなり

 時と運命に弱りたる英雄の心
 いちに合っして温和なれど 
 努め 求め たずね くじけぬ意志こそ強固なれ。
 "Odyssey" by Alfred Load Tennyson
 Come, my friends,
 Tis not too late to seek a newer world.
 Push off, and sitting well in order smite

 The sounding furrows; for my purpose holds
 To sail beyond the sunset, and the baths
 Of all the western stars, until I die,

 It may be that the gulfs will wash us down:
 It may be we shall touch the Happy Isles,
 And see the great Achilles, whom I knew.

 Though much is taken, much abides; and though
 We are not now that strength which in old days
 Moved earth and heaven; that which we are, we are;

 One equal temper of heroic hearts,
 Made weak by time and fate, but strong in will
 To strive, to seek, to find, and not to yield.

この詩の解説を蛇足ながら書いておきます。

12/29/2012

私が物語になる時

昔、谷川俊太郎の詩、

 いくらか誇張されいくらか
 縁飾りをつけられていたけれど
 その物語はとても本当の人生に似ていて
 だがそれを読み終えたあとも
 自分の暮らしは続いていることに
 気づかないわけにはいかない
 電車の窓外では街並が切れ一面の菜の花